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警備員は何も言わずに立ち上がったかと思うと、床に散らばった小包を見るなり焦ったように拾い集め始めた。
「クッソ・・・なんてことだ・・・・」
ブツブツ言いながらスーツケースに小包を詰め込む。
この様子を見ていた1年D組の1人の女子生徒が警備員があまりにも焦って可哀想だったのか、手伝おうと床に膝をついた。
彼女が小包に手を伸ばすとーーーーー。
「触るなぁっっ!!!」
男が突然、まるで発狂したかのように大声を上げた。
手伝おうとした子はビクッと方を震わせ、怯えたように立ち上がる。
同じ便に乗るらしい客達が、何が起きたのかと周辺に集まってきた。
男はさらに焦って小包を詰め込む。
全てをいれ終わると立ち上がって走り出した。
「邪魔だっ!!どけっ!」
人混みに突っ込んで、邪魔になった人を構わず突き飛ばし【関係者以外立入禁止】と書かれた部屋へ入って行ってしまった。
「なに、アイツ・・・」
「最っ低~」
2人の女子生徒が、さっきの男に怒鳴られた子の所へと駆け寄る。
「大丈夫?佳菜子?」
「だ、大丈夫だよ・・」
「さっきのやつ、今度見かけたらウチらが殴ってやるから!」
急に凛が、鋭い目で辺りを見回す。
「凛、どうしたの?」
声をかけると凛はあたしに顔を寄せて、囁いた。
「なにかおかしい・・・」
「え?なにが?」
「だって、こんな騒ぎがあったのに警備員とか従業員とか受け付けの人が1人も来ないなんて・・・」
確かに考えてみると変だ。
身体検査の係りの人だって、すぐ近くにいるのに見向きもせず黙々と仕事を続けている。
あたしも怪しく思って、受け付けに立っている女性をじ~っと見つめた。
その女性はあたしの視線に気づくと、動揺していますと言わんばかりの勢いで顔を背けた。
「凛、今の見た?」
「うん。明らかにおかしい・・・」
「瑠璃もできるだけ辺りに注意して」
「・・・わかった」
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