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俺は太陽が恨めしい。
何故なら太陽は沈むからだ。
太陽が地上を照らすとき、俺は一人じゃない。
学校の皆、バイトの皆、人に囲まれ楽しそうに笑う。
太陽が沈むと、俺は一人になる。
そして一人の夜を迎えるんだ。
かと言って寂しがり屋の女子みたいに、何の用もないのに友達に電話するのも、自分が孤独に弱い事を知られるようで嫌だ。
今日もじっと耐える夜が続く、そう思っていた。
プルルルル…
携帯電話が着信する。
クラスの奴だろうか?
すかさず着信画面を見るが『非通知』の文字が光る。
誰だ?バイトの連中も全員登録してあるはずだが。
ピッ
「もしもし?」
「モシモシ。ワタシめりーサン、イマ駅ノ前ニイルノ」
抑揚なく、感情のない機械のような、温もりのない金属を触ったような冷たい声。
「もしもし、もしもし?」
ブッ。ツー、ツー、ツー…
切れた。
何だったんだ、今の?
コレって、あの都市伝説の『メリーさん』?
知り合いの悪戯だろうか?
でも聞いた事のない声だし、そもそも普通の人間の声とは思えない。
プルルルル…
着信音が聞こえ、ハッと我に返る。
時計を見ると、もう15分ほども考え込んでいたようだ。
着信は『非通知』
ピッ
「もしもし?」
「モシモシ。ワタシめりーサン、イマ郵便局ノ前ニイルノ」
ブッ。ツー、ツー、ツー…
何で俺なんだ?
そりゃ一人が嫌だとは言ったけど、殺人鬼に会いに来られても困る。
落ち着け、まず思い出せ。
『メリーさん』とはどんな話か?
突然電話がかかってきて、家に段々近づいて来るというメッセージ。
最後には「今あなたの後ろにいるの」と言って包丁でメッタ刺し…とかそんなんだったか?
と言う事は電話がかかってきた時、壁を背にしたり、床に仰向けになって寝ていれば大丈夫なんじゃないか?
いやいや待て、現実的に考えろ。
メリーさんだって馬鹿じゃない。
背中を壁や床で隠したとしても「今あなたの目の前にいるの」って言われりゃ一発だろ。
仮に馬鹿だという事に賭けて試してみるには、危険度が高すぎる。
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