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「シロクダラゲットだな」
エレナが腕の中に抱えるシロクダラを触りながらいう。質感としては、蜜柑やデコポンと言った、柑橘類の皮のような感触だ。
「うん、お疲れ様ユズキ君」
ニッコリと笑みを浮かべて、言うエレナ、やっぱり彼女には笑顔が一番似合うと思う。
「おう、エレナもありがとう、お疲れ様」
俺がそういうと、エレナは笑顔の質を変えた。
「フフッ、帰ろっか、みんなも待ってるよ」
和やかな雰囲気が流れ、緩やかに髪を撫でる風も、いい感じに仕事をしてくれている。
「そうだな、この格好は肩凝るよ」
俺がそういいながら首や肩を回していると、楽しそうな小さな笑い声が耳に届く。
「なんか、おじさんくさいよ、本当にユズキ君?」
「残念ながらオヤジくさい俺は正真正銘ユズキ・ピタゴラスだ」
「あら、残念」
「失礼な」
俺が言い終えるとエレナは、再び短く笑った。つられて俺も笑顔になる。
「それかして」
エレナがもつシロクダラを指差す。しかしエレナは首を横に振る。
「持ちたいから持たせて!」
なんて意味のわからないこと言うので、俺は転移用魔法陣を展開する。
「じゃあ、転移するからな」
「よろしく、数の支配者さん」
俺は苦笑しながらエレナの頭を強めに掴み、転移した。
「痛いよユズキ君!!」
エレナの声は相変わらず耳に来る。
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