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最低限の舗装が施された林道の側にある小川に、眩い陽の光が降り注いでいる。
樹木の陰から、それに目を向けていた少女がふと口を開く。
「ねえ、『コロ』」
「……何だ?」
「天から降ってくる光って、何色なんだろ?」
全身をすっぽりと覆う真っ黒な外套から、銀の髪が覗いている。
コロは、小川に首を向けたかと思うと、すぐにそっぽを向いた。
「知らん」
さらさらと心地のよい水のせせらぎが、耳に優しく届く。
「……時に『主』よ」
「……なに?」
外套と同じく、真っ黒なタイツに包まれた細い足を放るように座っていた少女の視線が声の主に向けられる。
自分の出で立ちとは真逆の、真っ白な毛並みをした獣がそこに居た。
「その『コロ』という名は、確定なのか?」
少女は、即座に頷いてみせた。
「わたしが勝った時、『名前など無い。好きに呼べばいい』って言ったのはあなたよ?」
「ぐっ。確かに、そうだが……。何か腑に落ちないのだ。その名の由来あるいは根拠は何だ?」
少女は、悔しげに問う獣から視線を外し、僅かな時間を溜めて再び振り向いた。
「神の獣『白狼』っていうよりも、犬っぽいから」
「──!?」
白い獣・コロは、あまりのショックに言葉を失った。
「お手」
「畜生おおおおおお!!」
こんな娘に負けてしまった自分が恥ずかしい。
コロは、高らかに遠吠えを響かせながら、少女の掌に自身の左前足を乗せた。
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