この世界なんて消えてしまえ

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 あのあと世界はもとに戻った。  今にしてみれば、当時の体験は夢だったのかも知れない、とよく思うようになった。    もとの世界は厳しくてつらい。  今年で70になり、酸いも甘いも噛み分けてきた。素敵な巡り合わせもあり、子宝にも恵まれ孫もいる。  最近になりこの世界とは何かということをよく考える。暇な老いぼれには考える時間などいくらでもある。  この世界は恐ろしいほど理不尽なことばかりだ。  平等なことなんてない一つもなかった。  しかし、それでも美しいと思えることがすこしだけある。そのすこしだけを大切に守ることが、芳醇な人生へ繋がる事ではないだろうか。  老いぼれはそう考えるのです。  この恐ろしくも素晴らしい世界よ、ありがとう。
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