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「ハル」
理事長の視界に俺は入って無いようで、ハルに近づくとそっと頭を撫でた。
それにハルが身じろぎゆっくりと目を開いた。
「りゅ…ちゃん?」
「!ハル大丈夫か?どこか痛むか?」
「ん、だいじょぶ」
傷が痛むのか顔を顰めながらハルはゆっくりと上半身を起こした。
俺と目が合うと弱く微笑んで謝ってきた。
「ゴメン椎葉。約束守れなくて」
こんな時にこいつ何言ってんだよ…
絶対、バカだろ…
「バカハルッ!そんなんどうでもいいだろ!それより俺がもっと早く探してたら…」
「椎葉のせいじゃないよ。油断しまくってたオレが悪いの」
こいつは…
オレがまだ言い募ろうとしたところで保険医がパンッと手を叩き止まる。
「一ノ瀬、お前ムリヤリで身体キツイだろから、無理せず今は休め。稲瀬だったか?お前は帰寮しろ。担任には俺から言っておく」
そうだった。
こいつ病人じゃん。
これ以上は体に障るよな。
「はい、わかりました。ハル。また、な?」
「うん。ごめんね特典あげれなくなって」
「だから気にすんなって。じゃあな」
保健室を出て息を吐いた。
ハルの過去に何があったんだろう。
傷つけられたのは自分なのに、とても輪姦された後には見えないほど落ち着いて、周りを気遣ってさえいた。
気になるけど、まだ会って高々1週間。
俺ならぜってぇそんな浅い付き合いのやつに秘密を教えたりしない。
いや、何年経っても教えないことだって誰にだってあると思う。
それでも、もしハルがいつか自分から話してくれるなら…と思う。
まぁ、どう転んでも待つしかないんだよな。
俺、こんなキャラだっけ?
やっぱアレかな。主人公の周りも王道補正かかるんだな。
なんて馬鹿なことを考えながら寮に帰ることにした。
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