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ぎゅっと目をつぶって歯を食いしばる。
痛いの慣れてるからって怖くない訳じゃないんだからな。
けれどいつまでたっても拳はやってこなくて、代わりにパシンといい音が近くで響いた。
そして続くよく知る声。
「なにやってるんだ」
口調はいつもと全く違うけど、間違いなくそれはさっきまで一緒にいた人の声で。
俺に向けられてるわけでもないであろう殺気がバシバシと突き刺さる。
「ふ、…副会長様…」
チワワ君の声で、ゆっくりと瞼を開ければそこには険しい顔をした咲宮先輩がいた。
「さき・・」
声をかけようとしたけどかすれていて音にならない。
ヤバい。
泣きそう。
じわじわ緩む涙腺をいとも簡単に決壊させたのは咲宮先輩だった。
「悪い。遅くなった。もっと早く気付けてやれば…」
そう言いながら俺を抱きしめて宥めるように、ポンポンと頭をたたく。
それダメだろ。
「…ふ、そんな、とないれす。あいがと・・ざまう。…うー」
もう俺ボロボロ。
殴られてブサメンではなく泣いてブサメンになっちゃたよ。
結局ランクダウンですね。
舌まわんなくて、何言ってんのか俺自身もよくわかんねぇし。
「もう大丈夫だから。・・・で、お前らは覚悟できてんだよな」
「副会長さ・・ま・・・」
俺が見て、聴こえたのはここまで。
いつからいたのかハルに連れられ俺は保健室へと連行された。
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