連弾

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
期待して入学した高校は、変わらずくだらなかった。 バカバカしいユウジン作り、自分の居場所を探して這いずり回る奴ばかりで、入学初日から気持ち悪かった。 男はユウジン作り、女も同じか甘い臭いを振りまいて男に媚びていた。 進学校でも同じかと、呆れるばかり。 早々に帰り支度をして、狭苦しく感じる教室から飛び出した瞬間だった、 「君の名前は?」 明るいそれでいてどこか落ち着いた声音が、けして僕の肩には触れず、斜め横から声は振ってきた。 「僕は、相楽 陽司(さがら ようじ)。帰るから、ほっといてくれよ」 「ホームルームくらい居れば?嫌だろうが、義務ってものでしょう。ああ、私の名前は桜井 秋(さくらい しゅう)。親も変な名前付けたと思わない?桜って苗字についてるくせに、秋の漢字を名前に使うんだもの」 一息でそれだけ言うと、彼女は軽やかに笑った。 名前の音だけで、漢字までは判別できないというのに親切な奴だ。というかよく喋る、僕の苦手な人間の種類のようだった。 普通の生徒なら黙って彼女に従っただろう、 僕はもちろん無視をした。 可愛げが無いのは昔からだ。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!