優しい雨

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学校から30分も歩くと、地域で有名な自然公園が見えてきた。 小高い山に手を入れて作られたその公園は、自然自体にはほぼ手を付けず、手を加えられているのは遊歩道として舗装された部分くらいだ。 ―そういやここ、最近来てなかったな。 はしゃぎながらここを友達と駆け回っていた頃を思い出す。 中学ぐらいまではよく来ていたが、そういえば高校に上がってから全く来ていない。 学区内という狭い範囲の中に友達が皆いた頃とは違い、今は遠方の友達も多いため、比較的近所のここには来る機会がないのだ。 ―……。 その公園での思い出が妙に懐かしく鮮明に思いだされ、素通りして家に帰ろうとしていた足を公園に向ける。 どうせ全身は濡れているから雨は帰る理由にならないし、そもそも今帰ったところで暇を持て余すだけだ。 脳裏に浮かんだのは、公園一番の人気スポットである、紫陽花が群生することで有名な大きな池である。
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