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久々に来た公園の中は、昔とほとんど変わっていなかった。
入ってすぐに広がる、木々に囲まれた大きな芝生の広場。
そこから幾つも伸びていく、季節の花々や草木に彩られた遊歩道。
そのところどころに設置された、少し色褪せてささくれた木のベンチ。
それらをひとつひとつ眺めながら、俺は遊歩道を池に向かって進んでいた。
まだ降り続いている雨が、彼岸花に似た形の青い花を叩きその全体を揺らして、鋭く長い葉にしがみつくように乗っていた水滴が滑り落ちていく。
友達と遊ぶためだけに来ていた頃は目に入らなかった風景が、今は次々と飛び込むように目に入る。
俺は花とか木とかに特別興味があるわけでもない。
だが、独りでこうして歩きながらそれらを見ていると、今まで知らなかった草花や、普段は気がつかないような小さな自然が目に入り、俺はいつしかこの散歩に夢中になっていた。
「散歩って…楽しいもんなんだなぁ」
しみじみと呟く。
これから毎週末はここに来て散歩、なんて習慣をつけるのもいいかもしれない。四季が感じられて楽しそうだ。
「…………」
ふと思う。自分の今の思考はかなり爺臭いのではないかと。
…ちょっと落ち込んだとか気のせいだ。
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