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「ちがう!杉田、落ち着け!話せばわかるだろ」
「駄目なんだ…僕じゃないやつのとこに居ちゃ…鈴村さんが奪われる…渡すものか…僕だけの鈴村さんなんだ…他のやつといたら駄目なんだ…」
「杉田!?お前さっきからおかしいぞ!?」
「"おかしい"?おかしいのは僕じゃない!僕達じゃないやつらがいるこの世界で!僕は決しておかしくない!狂ってるのはこの世界なんだ!!この世界には僕達以外いらないんだ!!!!」
ついにわけのわからない事をいい始めた杉田は髪を掻き回し、叫んだ。
まるで俺達を否定するように。
「…ねぇ鈴村さん。二人で違う世界に行きましょう?これから、ズット二人ッキりでイられル世界。誰にモ邪魔サレなイ、世界ニ。ね?」
そう言い終わると同時に杉田の細くて冷たい手が、俺の首を掴んだ。
「すぎた!?なにすっ…ぐぅ」
だんだん力が込もってくるのが嫌でもわかった。
体を押しても叩いてもびくともしない。
圧倒的な差。
「…ぁっぐっ…すぎ、たっ!…やめっ…!」
首にかかる圧力が、息をするのを妨げる。
意識が遠ざかる中、ふと首がらくになるのを感じた。
『はーい、お疲れ様でーす』
それは収録する際にするベッドフォンからの監督の声だった。
「お疲れさまっしたー」
その声に返す様に杉田がいつもの優しげな声で挨拶をした。
げほげほと、いきなり入ってくる大量の空気にむせながら、訳がわからずに?がぐるぐる頭の中で回った。
「鈴村さんごめんなさい、苦しかったですよね。首絞めちゃったし、本当にすいませんでした」
杉田は俺の首に残った跡を撫でて、俺はびくびくしながらそれを受け入れた。
受け入れたと言うより、力が抜けて抵抗できないのだが
ーガチャ
「やー、杉田さん本当に病んでるみたいですごい迫力でしたよ。監督も満足そうだし」
「まじっすか?我ながら頑張りましたからね、あれでやり直しだと流石にぶちギレましたよ」
「OKでてよかったです」
いきなりスタジオにスタッフの川崎さんが入ってきて、杉田と何かを話している。
俺は話の方向性が掴めぬまま床に座り込んで、二人をただ眺めているだけだった。
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