真夜中の失踪者

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甲高いボリボリとする咀嚼音。 苛立ちから振り返ったのは金子である。 「いい加減するなりよ太田! 今は何を食べてるなりか!」 振り向き様に懐中電灯を翳す。 光源は金子と菜穂子、そして葵しか持っていない為に、まるで尋問を受ける犯罪者のように太田は光から顔を隠した。 隠した手には煎餅と、袋が見える。 「太田、流石に煎餅は無いぜ」 間中が半眼で呆れ返りながら太田を諭す。 確かに煎餅を砕く音は、ひっそりと静まり返った廊下には喧しい。 「ちょっと空気読もうぜ太田」 「せめて、なるべく音がしないもので頼むよ」 菜穂子と葵の追撃に、ようやく太田は五月蝿いと言う事を痛感したようだった。 全員の冷たい視線にさらされて、慌てて煎餅を袋に入れてリュックに戻す。 全員がウンウン頷いていると、リュックから肉まんが二つ出てきた。 全員が力無く肩を落とす。 どうやら何が何でも食べものは放さない気だ。 「肉まんも入ってたんだね」 茜の声に、太田は何故か不敵に首を振った。 まるで無知な子供を諭す大人のように何故か余裕綽綽だ。
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