真夜中の失踪者

15/19

128人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
「これは肉まんじゃないかな? かな? 太平堂のモッツァレラチーズまんと、チンジャオロースまんさ! この二つは熱々も上手いけど冷めても上手い! 普通に考えるとモッツァレラチーズまんのチーズは固まるからマズイと思うだろう? でもね、太平堂のチーズは口に含むと、咥内の熱でトロリと解けてくるのさ! この固くなった筈の固形物が流体に変わる食感が何とも言えないかな? かな? そして、チンジャオロースまんは食材の食感を活かす絶妙なサイズで切り分けてあり、それが口の中で絶妙なハーモニーを奏で出すかな? かな~」 そのままペラペラ喋り出す太田を間中は面倒と思ったのか、手からそのモッツァレラチーズまんを奪うと口に突っ込んだ。 フゴフゴ言いながら太田は非難の声を上げたが、全員は疲れた顔で先を急ぐことにした。 夜の廊下は窓から光が入らなければかなり薄暗い。 電源もブロックごと落とされているので、非常灯の明かりも消えている。 唯一の光源は懐中電灯だけだ。 その暗闇の中、いきなり何かを床にぶちまけたような音がした。 続いて軽い渇いた音に水が揺れる音が続く。 太田がペットボトルを床にぶちまけたのだろうと、全員が苦笑いを浮かべた。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加