真夜中の失踪者

16/19
128人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
その後に続いて、再び煎餅を砕くような音が響く。 誰しもが、太田が我慢出来なくなって煎餅に手を付けたと判断した。 そのまま我慢して先を進む。 しかし、ボキバキと音は続き、床にチンジャオロースまんを落としているのか、何やらベチャベチャッとした音も続く。 流石にマズイと感じて間中は後ろを振り返った。 「いい加減にしとけよ太田? 水は渇くからいいが、食い物を床に零したらばれるぜ?」 暗闇の為にくちゃくちゃと咀嚼する音以外姿は良く見えない。 夜目には慣れて来たが、何やら目の前にプラプラしているものがあるのだけは理解出来た。 「何やってんだ太田?」 手を伸ばすと太田の膨れた足に触れたのが分かった。 そこで間中は疑問に眉を寄せる。 普通に伸ばした手は、本来同じような身長の太田の肩辺りに当たる筈だ。 それなのに触れた感触は足の太股である。 「太田?」 不安そうな間中の声に、ようやく全員が振り返る。 面倒そうに菜穂子は懐中電灯を背後に回す。 「何やってんだよ太田? そろそろ食い物を食うのは止め……」 そこで言葉は途切れた。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!