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懐中電灯の明かりに晒されたのは、天井からぶらがっているのかプラプラと浮かぶ太田な腹部から下半身だった。
何やら赤黒い液体が滴っている。
そのまま明かりを上にずらす。
太田の腹部、胸を通った明かりは、そこに奇妙なものを映した。
噴水だ。
何やら赤黒い液体を噴出している噴水。
噴水の出元は胸部の上だった。
本来頭がある首から溢れ出ている。
その上から、モギュモギュと耳障りな咀嚼音が放たれていた。
異変に気づいて、金子と葵の懐中電灯もそこに光を当てる。
そこには奇っ怪なものが照らされていた。
老婆の顔があったのだ。
口をモゴモゴさせながら首を傾げる老婆の顔が。
その首から下はやせ細った猿のようなものだった。
ただ異常に背が高い。
天井すれすれの高さを考えれば二メートルはあろうか。
その両腕が小刻みに震えている、太田の首なし肢体を大事そうに握っていた。
まるで艶やかな花を飾った花瓶を、大事そうに持つように。
「なっ……なんだこれ?」
顔を引き攣らせながら間中はゆっくりと後退り始めた。
残りのメンバーは、何が起こったのか頭が理解出来ないのか棒立ちだ。
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