山道の悪夢

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「それが私が記憶している全てです」 茜の独白に御社は渋い顔をしていた。 眉唾話も良いところだろう。 普通の大人ならば失笑ものだ。 夢見がちな高校生の創作か、薬でもやっていたのかと考える所である。 だが、御社の反応は違った。 何やら急に百面相を始めると、不可解にテーブルを指で小突き出す。 その反応を茜はネガティブに捉えた。 「確かに常識的に見れば集団幻覚と言われるかも知れません! 警察もまともに取り合ってはくれませんでした。捜査をせずに失踪届けだけを出せとだけ言われました」 「まあ~。警察はそうでしょうな。基本的に彼等は事件が起こってからでないと動かない。ただ、警察官が悪いのでは無く、警察のシステムが腐っているだけだが」 「だからこそ先生の事務所に来ました! テレビでも取り上げられている敏腕探偵だと。お願いです! 姉を捜し出してください!」 真摯な訴えに、御社は露骨に視線を外した。 明らかに依頼を嫌がっているように見える。 それを見て茜は拳を握りしめた。 「お金ですか? お金ならしっかり払えます! 自分の身の回りのモノを全て売って来ました。頼めば父もお金を出してくれる筈です」
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