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そう言うと茜は持っていた手提げ鞄から、封筒を取り出して机に置いた。
そと見からでも、かなりの額が入っていると分かる太さだ。
それを見ても御社の態度は変化しなかった。
はした金と考えたのか、依頼の内容が気に食わないのかは分からない。
「えーと、結城茜さん。縦しんば貴方の言っている事が正しいとして……お姉さんは生きていると思う?」
ストレートな質問が来た。
茜は俯いて黙り込む。
手が小刻みに震えている事に御社は気付いたが、あえて無視する事にする。
行方不明者が五体満足で帰って来ない事はざらだ。
今回の話は、それ以前に生死不明の可能性が高い。
「ちなみに、逃げ出した後、警備員と現場に戻ったのかね?」
その答えに茜は無言で頷いた。
御社は微妙に肩眉を上げて表情を窺ったが、特に変化は見られなかった。
「それで現場の状況はどうだったのかい? 話からして、御友人のバラバラ死体と、床は血の海な気がするがね?」
御社の質問は至極真っ当なものであった。
話が本当ならばであるが。
死亡届けと、失踪届けでは意味合いが大きく異なる。
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