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前者なら警察が動いていない訳がないと御社は分かっている。
そうなると答えは後者だ。
今の質問はただの確認作業である。
「私と警備員がそこに向かうと、死体も姉も……猿の化け物もいなかった……です」
予想通りの回答だ。
御社は頭をボリボリと書いてから、わざとらしく煙草を取り出した。
火を着けようとして灰皿が無いことに気付く。
柚木に顔を向けると、真顔で禁煙ですと突っ込まれた。
仕方なく煙草をしまうと、わざとらしい咳をして茜に向き直る。
「えー、幾つか確認させてもらおうか? まず、お姉さんは行方不明?」
「はい」
「その喰われた同級生は?」
「太田君も行方不明扱いです」
「ふむ」
少なくとも失踪事件にはなっている。
最悪、調査費だけでも搾れ取れるかと納得しておく。
と、なると問題は一つである。
老婆顔の巨大な猿だ。
妖怪、怪異と呼ばれるようなお伽話に出て来るような化け物の存在。
それをどう取るか。
本来なら失笑に伏す内容である。
だが、そう出来ない理由が御社にはあった。
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