山道の悪夢

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眉間にシワを寄せて天を仰ぐ。 見えるのは真新しい天井だけだが、考えてますと言うポーズには見えるだろう。 明らかにやる気のない顔に変化していたが、わざとらしく威風堂々とした顔を作り茜に向き直った。 「やりましょうお嬢さん。ただし、あくまで失踪したお姉さんの捜索としてならば。そのご友人捜索と、妖怪の是非は無視させて貰いますがよろしいかな?」 御社は商売専用の、やる気に満ちた表情に切り替えている。 誠意ある対応を心掛ける誠意ある一紳士顔を造るのは、彼の特技の一つであった。 その顔を見て、茜は深々と御辞儀をする。 「どうか姉を見付けてください。太田君には悪いですが、死んだ人間の事を気にしてはいられません。老婆顔の大猿に至っては私の目の錯覚と思いたいぐらいです。でも、姉がその大猿に捕まっているならば一刻の猶予もありません。どうか姉を助け出してください」 腰を折った茜を見ながら御社は胸中で、 (まぉ、俺がやるのはお姉ちゃんを見付ける事だけで、救出とやらは俺はやらないんだけどね) と独白していたが、茜には知るよしもない事柄である。 「分かりましたお嬢さん。お姉さんは私が見付け出しましょう! それで、早速嫌らしい話ですが金銭の説明をさせて貰ってよろしいかな?」
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