山道の悪夢

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御社は揉み手をしながら、悪代官に賄賂を送る商い問屋の旦那の様な顔で満面の笑みを浮かべていた。       ◇ 茜が帰宅して直ぐに、御社は社長室に戻ってからだらけた姿勢で煙草を一服やり出した。 ちょろい仕事が入ったと思う半面、嫌な記憶が蘇る。 妖怪なり怪異なりの言葉は彼には禁句の一つであった。 「まさか……まさかマジ話じゃ~ないよな~。うん。今の時代、あの時見たいな悪夢がまた起きる訳が……」 そこまで独り言を言ってから顔を引き攣らせる。 昔経験した恐怖を思い出して冷や汗が溢れ出す。 そこにドアを叩く音が続き、室内に入る許可を宣言する前に柚木女子が入って来た。 「柚木君。まだ入室を許可していないじゃないか? ボクがこの部屋で、未亡人と情事にでも励んでいたらどうする気かね?」 「お構いなく。全力でスルーしますので、性交渉なり自慰行為なり好きなようにしてください」 無表情で坦々と語る口調は本気のようだ。 理由的な敏腕美人秘書。 ついでにナイスバディだが、愛嬌がゼロと言う事と口が悪い事だけが頂けないと御社は閉口する。 「こちらが結城葵及び結城茜の資料です。今拾えるだけの情報は集めました。これ以上はアングラか情報屋に資金を使うしかありませんね」
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