128人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
渡された資料に目を通しながら、御社は不機嫌な顔をした。
親の名前を見たからだ。
親の名前は結城信十郎とある。
有名なIT企業の社長の名前だ。
娘が金を持っている理由の説明にもなり、親から更に金を巻き上げる算段もつく。
だが――失踪事件はマスコミには大歓迎の対象だ。
すっぱ抜かれると捜査した自分にも目が行く可能性がある。
葵が見付かれば御の字だ。
それは遺体でも構わない。
だが、何も見つかりませんでしたでは自分の評判に傷がつく。
売名行為には持ってこいだが、リスクが付き纏う。
「さて……どうしたものか」
わざとらしく腕を組むと茜と葵の資料を交互に眺める。
ひとしきり考えてから、御社はゆったりと立ち上がった。
「まあ~、IT関連のツテはないからな。恩を売るのもメリットか」
メリットとデメリットを比較した結果、御社は仕事を受ける事をようやく決めたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!