山道の悪夢

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渡された資料に目を通しながら、御社は不機嫌な顔をした。 親の名前を見たからだ。 親の名前は結城信十郎とある。 有名なIT企業の社長の名前だ。 娘が金を持っている理由の説明にもなり、親から更に金を巻き上げる算段もつく。 だが――失踪事件はマスコミには大歓迎の対象だ。 すっぱ抜かれると捜査した自分にも目が行く可能性がある。 葵が見付かれば御の字だ。 それは遺体でも構わない。 だが、何も見つかりませんでしたでは自分の評判に傷がつく。 売名行為には持ってこいだが、リスクが付き纏う。 「さて……どうしたものか」 わざとらしく腕を組むと茜と葵の資料を交互に眺める。 ひとしきり考えてから、御社はゆったりと立ち上がった。 「まあ~、IT関連のツテはないからな。恩を売るのもメリットか」 メリットとデメリットを比較した結果、御社は仕事を受ける事をようやく決めたのだった。
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