山道の悪夢

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動くとなると御社の行動は迅速だった。 まずは結城信十郎の会社に連絡してアポイントをとる。 これは葵の失踪確認と、成功報酬の上乗せが可能かの吟味だ。 会う約束を取り付けると、次に事件性の確認に現場に向かう。 だが、そちらは全く成果が出なかった。 学園の警備は厳重であり、いきなり向かっても中には入れなかったのである。 直ぐに学園に電話をして用件を伝えたが、事実の確認中の一点張りだ。 現場確認は敷居が高いと判断して後に回す。 「くそ。なまじっか警察が関与していない方が面倒臭いったらありゃしない」 溜息を吐いてから、有名ブランドのスーツの胸ポケットから煙草を取り出してくわえる。 警察には幾らでもツテはあるが、学園では手の出しようがない。 茜達が使ったような、セキュリティーパスなど存在しないのだ。 「待てよ? 学園が無理でも警備会社なら……」 今度は内ポケットからスマートフォンを取り出すと、素早く関連会社を調べる。 その会社を確認してからにんまりと笑みを浮かべた。 「ビンゴ!」 その会社には、以前浮気調査で仕事を受けた男の名前があった。
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