演技者とゲーマー

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 テストの相手が分かっていれば、体力的に不利な真帆がいても、充分に勝てるだろう。  そう思うと同時、想一は真帆に対して、ある種の興味を抱いていた。 (こいつ、面白いかも)  具体的に何が、というわけではないのだが、想一は真帆と自分の感覚がどこか似ていることを感じ取っていたのかも知れない。 「なぁ、今度…一緒に映画見ない?面白い映画あるんだよ。アクション映画なんだけど…」  思いつきで口走った言葉と共に、ふと想一が振り向いた時。  真帆は用事が済んだとみると、既に立ち上がり、ふわふわと部屋を出て行っていた。  戦闘訓練テストは、想一が真帆の体力不足をカバーし、真帆の射撃の能力を全面に引き出した。  想一も以前よりも射撃の腕を上げており 「射撃は、ゲーム。カーソルキーを合わせるように、正確に狙いを定める。銃の反動も計算して、ズレを修正する」  真帆のこの言葉が、テストでも大いに活かされた結果となった。 「やったな!」  テスト後、想一は真帆の肩を叩いた。 「これが友情の始まりだな」  映画『カサブランカ』の名言と共に、想一は笑ったが、真帆はきょとんとしている。 「…友情?」 「改めて聞かれると恥ずかしいんだけど、一応、俺達、友達だろ?」  想一を見て、真帆は首を大きく傾げる。 「…トモダチ」  その言葉の意味について、考え込むような顔だ。  可笑しそうに想一が笑う。 「考えるな。感じろ…ってな」  またしてもワケが分からなさそうにしている真帆に、想一は眉を下げた。 「知らない?『燃えよドラゴン』の名台詞なのに。あ、じゃぁ、こっちは?心の声を聞くんだ…」  ちなみにこちらは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の台詞だが、当然それも真帆は知らない。  と言うより、その台詞を言い終わるより先に、真帆は想一からふらふらと離れて、どこかに行ってしまっていた。 (仕方ない、昼飯でも誘って見るか)  想一は小さく苦笑した。  真帆のことだから、当然、それも断るのかも知れないが…。  二人は案外、相性が良いのかも知れない。  少なくとも、想一は真帆にとって、初めてのパソコン以外の親友になるかも知れない存在だった。 END
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