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東都防衛学院―――低迷する日本国家で初の、防衛教育に特化した、全寮制の私立中高一貫校。
英語や数学など、一般的な学生と同じ教養を身に付けると同時に、体育とは比べ物にならない厳しい基礎体力の錬成の授業があり、軍事の基本である、小銃の取り扱い方、射撃、衛生管理、格闘などの専門分野を学ぶ、特殊な学校だ。
そんな学校の特徴と言うべきか、クラスの人気者である条件は、少し変わっている。
男子で言うなら、まず明るく、クラスの中心的存在であること。
「ヒーロー見参!」
特撮オタクではあるが、教室の中央で恥ずかしげもなくヒーローポーズを決める遠藤 長太郎は、いつでもクラスメイトの笑いを誘い、同時に人を引き寄せるものがある。
成績も優秀で、運動能力も優れているが、英語だけは極端に成績が低いというのも、人の妬みを買わない要因だろうか。
一方、女子はと言えば、間違いなく橘 和美だろう。
長い黒髪に、意思の強そうな二重の瞳。眉目秀麗なだけでなく、成績は学年トップを誇り、武術でも右に出る者はいない。
常に一番でなければ気が済まないという気の強さはあるが、そこを大目に見ても、男子生徒の注目の的である。
男女に共通する人気の条件として
「射撃の腕が良い」
というものがあるのが、この学院の特殊な所である。
誰が言い出したわけではないのだが、夏に毎年開かれる射撃大会の優勝者は、総じてクラスの人気者になるという、伝統的なジンクスがあるのだ。
そして、決してクラスで目立つ存在ではないのだが、秘かに男子生徒の人気を集める少女がいた。
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