暗殺者とヒーロー

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 一週間後。  結局、亜紀と長太郎は大した話し合いもせず、戦闘訓練のテスト日を迎えることになった。  二人一組の男女ペアで、2対2の模擬戦闘をする。  フィールドとなるのは、屋内実践訓練施設と呼ばれる、市街戦を想定した作りの施設だ。  その施設の南が、亜紀と長太郎のスタート地点。  反対側の北には、同じく男女ペアのクラスメイトがいるはずだ。 「相手が誰であろうと、俺が倒す」  長太郎はそう息巻いていたが、亜紀は 「相手は橘さんと、一三四(ニナイ)くん」 と告げ、前髪のピンを留め直した。 「なんで知ってるんだよ?」  長太郎が不思議そうに亜紀を見る。  このテストでは、より実戦に近付けるため、敵となる相手がどのペアであるかを告知していないのだ。 「まぁ、ちょっと」  亜紀はそこを曖昧に誤魔化したが、実際はルームメイトである真帆の情報収集の技術を、彼女の好きな棒付きキャンディーで買っただけだ。  敵の情報を知り、実地に入る前に、少しでも自分達を有利な状況に導くこと、それが戦略である。 「敵は橘とニナイか…。ニナイはともかく、橘はやっかいだなぁ」  ぽりぽりと顎を掻きながら、長太郎が呟く。  橘 和美―――文武両道で学年最優秀の女子生徒。中国武術の心得があり、射撃の腕も良い。接近戦になれば、勝てる者はそういない。  筋力のない亜紀は愚か、成績・体力がそこそこの長太郎でも難しいだろう。  が、それに関しても、亜紀は既に手回しをしてあった。 「…ニナイくんは、私がどうにかするから、遠藤くんは橘さんをお願い」
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