417人が本棚に入れています
本棚に追加
一週間後。
結局、亜紀と長太郎は大した話し合いもせず、戦闘訓練のテスト日を迎えることになった。
二人一組の男女ペアで、2対2の模擬戦闘をする。
フィールドとなるのは、屋内実践訓練施設と呼ばれる、市街戦を想定した作りの施設だ。
その施設の南が、亜紀と長太郎のスタート地点。
反対側の北には、同じく男女ペアのクラスメイトがいるはずだ。
「相手が誰であろうと、俺が倒す」
長太郎はそう息巻いていたが、亜紀は
「相手は橘さんと、一三四(ニナイ)くん」
と告げ、前髪のピンを留め直した。
「なんで知ってるんだよ?」
長太郎が不思議そうに亜紀を見る。
このテストでは、より実戦に近付けるため、敵となる相手がどのペアであるかを告知していないのだ。
「まぁ、ちょっと」
亜紀はそこを曖昧に誤魔化したが、実際はルームメイトである真帆の情報収集の技術を、彼女の好きな棒付きキャンディーで買っただけだ。
敵の情報を知り、実地に入る前に、少しでも自分達を有利な状況に導くこと、それが戦略である。
「敵は橘とニナイか…。ニナイはともかく、橘はやっかいだなぁ」
ぽりぽりと顎を掻きながら、長太郎が呟く。
橘 和美―――文武両道で学年最優秀の女子生徒。中国武術の心得があり、射撃の腕も良い。接近戦になれば、勝てる者はそういない。
筋力のない亜紀は愚か、成績・体力がそこそこの長太郎でも難しいだろう。
が、それに関しても、亜紀は既に手回しをしてあった。
「…ニナイくんは、私がどうにかするから、遠藤くんは橘さんをお願い」
最初のコメントを投稿しよう!