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「遠藤さん…!」
昼休みになると、数人の男子生徒がその少女の元に駆け寄った。
遠藤 真帆―――どこか憂いのある…と言うよりも、ぼんやりした目をしていて、線が細い。
幼顔で、背も低く、肌は陶器のように白い。
一部の男子に熱狂的なファンがいるにはいるのだが…
「良かったら、今日の昼ご飯、一緒に食べない?」
普通の中学生なら顔を赤らめても良さそうな場面だが、真帆は表情を変えない。
やや大き目な制服の所為か、袖から少しだけ出た指先で、眠たげな目を擦り
「……」
無言で席を立っただけだ。
その両手で、大切そうに自作ノートパソコンを抱いている。
「パソコン、重そうだね。持とうか?」
そう言って来る男子生徒もいたが、真帆は首を横に振る。
彼女が食堂に向かうと、その後ろに男子生徒の列が出来た。
「…Aセット」
真帆が言うのを聞いて、後ろの男子もこぞって
「俺も!」
と声を揃える。
そして、真帆が席に着くと、その周囲に男子生徒が座る。
が、真帆は何も会話をしようとしない。ただもぐもぐと小さな口を動かして、食事を取るだけだ。
喋っているのは、周囲の男子生徒だけである。
これで一緒に食事をしていることになるのかは微妙な所だが、学校柄、男勝りな女子生徒も多い中、真帆の小動物的な大人しさが人気の秘訣なのかも知れない。
もっとも、真帆自身は自分が人気であることに、全く自覚がないのだが。
男子生徒らがいなくても、真帆は食堂に行き、食事を取るだろう。
ただ自分の行く場所に、何故か男子生徒が付いて来るというだけのことなのだ。
特別それを嬉しいとも、逆に迷惑だとも考えたことはなかった。
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