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どうやら、ニナイは先に倒されたようだ。
余りに呆気ない終了に、和美はその場でがっくりと項垂れた。
ふっと和美の上に影が落ちる。
顔を上げると、そこに笑顔の長太郎がおり、右手を差し出して来た。
「今回は俺の圧勝だったな」
差し出してもいない和美の手を握って、長太郎は満足げだ。
が、和美は長太郎に撃たれたことより、自分のすぐ真後ろからした声が忘れられない。
(あの声、もしや鳥原さん…?)
他にいない。
洞察力の鋭い和美が、あんな至近距離の彼女の存在に気付かないとは。
そして、亜紀の行動に気付いていないのは、和美だけではなかった。
「俺の手柄だなっ」
と喜んでいる長太郎はもちろん
「急に後ろから…やられちゃいました」
情けない顔で、背中の赤インクを見せた、ニナイもである。
真後ろからの攻撃―――音もなく忍び寄る、暗殺者の動きだ。
(鳥原さん…)
和美はゾクリと鳥肌が立つのを感じていた。
敵に回せば恐ろしいが、普段は同じ学院生として、連帯意識を持つ同期である。
和美は、亜紀が同期であることに、安堵せずにはいられなかった。
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