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数日後、テスト結果の発表日。
亜紀・長太郎ペアは断トツの一位だった。
最短時間、および最低限の発砲で相手を倒している。
もちろん、長太郎は亜紀が何をしたのか、全く知らない。
が、戦闘開始前に自分達が相手であることを、和美に伝えておく戦略も、敢えて長太郎をその場から動かさずに陽動作戦を取る戦術も、全ては亜紀の思惑通りである。
戦闘が始まってすぐ、亜紀は建物に隠れ、最初にニナイを背後から撃ち、すぐに和美を追った。
和美の後ろから声を掛け、気が逸れた瞬間に、長太郎に撃たせる。
長太郎は
「鳥原一人で、男のニナイを相手にしたんだろ。大丈夫だったか?」
と心配の目を向け、亜紀は頷いた。
「…なんとか。真正面から敵を迎え撃つなんて、遠藤くん以外、出来ることじゃないよ」
単純な長太郎は、へへっと照れて鼻の頭を掻いた。
学年トップの和美を倒した長太郎は一気に注目を浴び、ご機嫌だ。
「やっぱ、俺ってヒーロー?」
ニッと笑う長太郎の横で、亜紀は初めて、彼に向けて笑みを見せた。
「…だね」
その笑顔は意外にも、年相応の少女らしい、柔らかなものである。
これで案外、亜紀は長太郎を気に入っていたのである。
「俺達、仲間だよなっ」
長太郎が、ぐっと亜紀の肩を抱く。
「……っ」
トンッとぶつかった長太郎の胸板に、亜紀の顔が熱くなった。
「仲間同士、これから祝杯でも挙げるか。購買で、ジュース買ってやるよ」
仲間などという、普通なら恥ずかしくなるような言葉をさらりと言えてしまう長太郎が、亜紀には眩し過ぎて、まともに顔を見れない。
「…わ、分かったから…離れてよ」
ぽつりと呟いた声が、長太郎に届いていたかどうか。
とにかく、こうして二人は仲間になったのである。
END
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