演技者とゲーマー

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 真帆は食事を終えると、ノートパソコンを抱き、一人で情報室へと向かった。  元々、真帆は家で引きこもっていた少女である。  彼女の興味は、全てインターネットの世界にあった。  両親はインターネットセキュリティや、ハッキングなどの攻性プログラムを研究する科学者である。  両親とも共働きの為、玩具代わりに与えられたパソコンだけが、真帆の唯一の親友だった。  親子の時間が少なかったからか、あるいは独りでいることに慣れ過ぎたのか、真帆は特別、他の友人が欲しいと思ったことはない。  パソコンにばかり向き、一度は違法なハッキングツールを作成までした。  娘が違法行為に手を染めたと知った両親に 「規律ある生活と、自立を」 と、半ば強制的にこの学院に入れられるまで、おおよそ運動らしい運動をして来ていない。  独学では決して得ることの出来ない、情報処理の技術や、暗号化されたコードの解読法、国同士の見えないIT戦争についてを学ぶことが出来るから、この学院にいるが、そうでなければ格闘技の授業や、火炎瓶の作り方を教わる授業など、とっくに逃げ出している所である。  本来なら午後の授業はさぼってしまいたい所だが、今日は新型の小銃を使った射的の授業があり、サボるわけにもいかない。  仕方なしに、ふらふらと情報室に入って行くと、流石に昼休みだけあって、結構混み合っている。  空席を探し、真帆はすぐにポケットから棒付きキャンディーを取り出した。  目の前に 「飲食厳禁」 の赤い文字が見えているにも関わらず、だ。  が、これは真帆にとって日常茶飯事である。  親の教育がなかったからか、真帆にはあまり道徳的な考えや、善悪の判断という観念がない。
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