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しばらくして
「あの…数え終わりました」
善司の声に、和美はハッとして瞬きを数度繰り返した。
要領の悪い善司の方が、弾丸の数を先に確認し終わり、和美はただぼんやりとしていただけだったからだ。
何故か焦点が合わず、目が霞む。
目元を擦る和美を見て、善司が神経質そうな眉を寄せる。
「…橘さん、大丈夫ですか…?」
「何が…?私は、大丈…」
急激な眩暈に襲われ、和美の体が前傾にふらついた。
まるで床が傾いているかのように、三半規管が狂いだしているのが分かる。
「…橘さん…!誰か…!」
最後に聞いたのは、善司が慌てながら助けを求める声。
そこから、和美の意識はぷっつりと途切れてしまった。
「…ん…」
小さな呻き声と共に、和美が目を覚ましたのは、白い部屋だった。
(そうだ、私倒れて…)
誰かが医務室に運んでくれたのだろうが、少なくとも善司ではあるまい。
彼に和美を抱き運べるだけの力があると思えない。
「橘さん」
呼び掛けに応えようと、体を起こそうとした和美の肩を、誰かの細い手が抑える。
(誰…?)
そして、その人物が和美の額に触れた。
ひんやりとした体温の低い手に、和美は心地よさを覚えて、目を閉じる。
「あの…熱があるみたいです。ゆっくり休まないと、ダメですよ」
「でも、」
テスト勉強が、と呟くより先に、和美は再び意識を失っていた。
ただ覚えているのは、和美の額に添えられた手の指先が、とても綺麗だったこと。
きっちり爪が切り揃えられていて、柔らかい指先だった。
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