417人が本棚に入れています
本棚に追加
ゲームの世界の真帆は、既にカウンターストップ(数字がそれ以上上がらない)の最強設定である。
レベルがそれ以上上がらないとなると、普通の人間は飽きてしまうのだろうが、真帆は違った。
真帆がログインすると同時、ゲーム上のチャット画面に文字が溢れる。
「カンストのマホ様、来た!」
「ボスが倒せないので、助けて下さい!」
「アイテム交換して下さい。レアアイテムあります」
「仲間になってくれませんか?」
ゲームの世界では、真帆は自分が人気者である自覚があった。
ディスプレイを見詰める真帆の目が、少しだけ嬉しそうに細まる。
次々に仲間申請や、アイテム交換のメッセージが送られて来た。
(さぁ、一暴れしようかな)
誘われたボス戦への参加のOKボタンを押す。
真帆のキャラクターは拳銃を使用しており、既に『伝説のガンマン』というガンマンキャラクターを使うユーザーの中で、たった一人にのみ与えられる称号を手にしていた。
倒した敵の数もさることながら、ヒット率の数値が異様に高い。
アイテムの保持数や、防御力の数値などは多少プログラムをいじってあるが、このヒット率に関しては、真帆は一切のチート手段を使っていなかった。
このゲームは単純だ。
カーソルキーを使って、敵の弱点にポイントを絞り、エンターキーで攻撃。
動く敵に合わせて、カーソルキーを上下左右に動かす真帆の指は、驚くべき速さと正確さを備えているのである。
「もはや神業!」
ゲームの世界ではそう称賛する者が、後を絶えなかった。
その日も真帆は次々に敵を倒し、ゲームからログアウトしたのは、昼休みの修了を告げるチャイムと同時だった。
最初のコメントを投稿しよう!