演技者とゲーマー

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 ゲームの世界の真帆は、既にカウンターストップ(数字がそれ以上上がらない)の最強設定である。  レベルがそれ以上上がらないとなると、普通の人間は飽きてしまうのだろうが、真帆は違った。  真帆がログインすると同時、ゲーム上のチャット画面に文字が溢れる。 「カンストのマホ様、来た!」 「ボスが倒せないので、助けて下さい!」 「アイテム交換して下さい。レアアイテムあります」 「仲間になってくれませんか?」  ゲームの世界では、真帆は自分が人気者である自覚があった。  ディスプレイを見詰める真帆の目が、少しだけ嬉しそうに細まる。  次々に仲間申請や、アイテム交換のメッセージが送られて来た。 (さぁ、一暴れしようかな)  誘われたボス戦への参加のOKボタンを押す。  真帆のキャラクターは拳銃を使用しており、既に『伝説のガンマン』というガンマンキャラクターを使うユーザーの中で、たった一人にのみ与えられる称号を手にしていた。  倒した敵の数もさることながら、ヒット率の数値が異様に高い。  アイテムの保持数や、防御力の数値などは多少プログラムをいじってあるが、このヒット率に関しては、真帆は一切のチート手段を使っていなかった。  このゲームは単純だ。  カーソルキーを使って、敵の弱点にポイントを絞り、エンターキーで攻撃。  動く敵に合わせて、カーソルキーを上下左右に動かす真帆の指は、驚くべき速さと正確さを備えているのである。 「もはや神業!」  ゲームの世界ではそう称賛する者が、後を絶えなかった。  その日も真帆は次々に敵を倒し、ゲームからログアウトしたのは、昼休みの修了を告げるチャイムと同時だった。
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