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「よくやった。遠藤は修正能力が高いな」
教師が満足げな笑みで、真帆を見た。
一発目を撃った時、真帆は一応、的の中心部を狙ってはいたのだ。
が、小さい割に威力の強い小銃は、その反動が大きく、トリガーを引くと同時に、小銃が上向きにズレてしまいがちである。
一度目で、それを覚えた真帆は、二度目に撃つ時、その反動のズレを修正し、敢えてやや下向きに照準を定めて撃った。
教師はそれを見抜くと、生徒に隣同士の男女でペアを組むように指示した。
「互いのフォームを見て、良い点、悪い点を指摘し合え」
必然的に、クラスメイトの前に立たされている真帆と想一が、ペアになる。
真帆は眠そうな目で想一を見て
「さっきのフォーム、映画の真似?」
と言う。
「ん、まぁ…そうだけど。上手く真似出来ないもんだな」
想一が苦笑を漏らす。
とにかく想一は、真帆から射撃の技術を習おうと
「さっきの、どうやって撃ったんだ?」
と尋ねながら、小銃をもう一度的へと向けた。
銃の反動を押さえこむ力が、想一と真帆では違う。
だから同じ中心を狙っても、力のある想一は上にズレても的を射たが、真帆は大きく外したのだ。
真帆は
「一回目のズレを、二回目で修正する。あなたのズレはおよそ20cm…あと20cm、下を狙えばいい」
と言う。
想一は頷いて、中心からおおよそ20cm下に狙いを定めたが、真帆は
「もう少し下。行き過ぎ、もう少し上」
と細かい指示を出す。
想一はその通りにしたが、真帆の正確な読みに疑問が浮かんだ。
「どうやってそんな正確に照準を合わせてるんだ?」
「…ゲームと同じ。狙うべき場所に十字をイメージする。で、カーソルキーを使うみたいに、照準を上下左右に合わせてく」
言われるがまま、想一は狙うべき場所に十字の線をイメージした。
なるほど、確かに先ほどよりも、照準が合わせやすい。
想一は、少し上向きに銃口を向け
「そこ」
真帆が頷いた瞬間、引き金を引いた。
すると、見事に的の中心部を射抜いている。
生徒達の中で、的の中心に命中させることが出来たのは、真帆に続き、想一が二番目だ。
「おぉ…」
想一は感嘆の声を漏らし、手に感じている銃の感触に少し酔った。
まるで映画の中のような、非日常のこの感覚が、想一は好きなのだ。
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