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さらに数日後。
真帆と想一は、またしても授業でペアを組むことになった。
今度は戦闘訓練のテストである。
「来週のテストに向け、男女ペアを発表する。それぞれテスト日までに、作戦を練っておくように」
発表された男女ペアに、クラスがざわついた。
学年トップである橘 和美のように
(絶対勝つ)
と自信を持つ者もいる。
ヒーローオタクの遠藤 長太郎のように
「正々堂々と正面突破!」
と戦術を大声でバラす者は特殊だったが…。
少なくとも真帆は、相変わらず眠そうな目をしていて、表情に変化はない。
より実戦に近付けるために、相手チームが誰であるかは発表されないのだが、想一は笑いながら、真帆の背を叩いた。
「俺達は余裕だな。射撃の名手がいれば、負ける気はしないし」
「…負けるよ?」
何言ってるの、とでも言うかのような真帆のきょとんとした顔に、想一は唖然とする。
「何だよ、それ。遠藤、射撃めちゃくちゃ上手いじゃん」
「ん…でも」
真帆は首を横に振った。
真帆はただ射撃をするだけなら上手いが、実戦形式で走り、隠れ、飛び出すという様な肉体を使うことになると、自分の体格的にはきついということを自覚しているのだ。
想一はそれを聞くと、くすりと笑った。
「じゃ、作戦を立てよう」
そして、一本の指を立てて見せる。
「敵を知れ」
「ん?」
真帆がかくりと首を傾げる。
「あれ、知らない?かの有名なゴッドファーザーの台詞なんだけど」
映画のタイトルを出されても、真帆には分からないらしい。
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