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うちわのおはなし
「なにこれ?」
それを葉咲から受け取った海山は茶色の柄に黄緑色のへり、
「あ、写真なんだ」
木洩れ日を切り取った頭の印刷面を裏表に返しながら眺めていた。
「販促物?」
隣で骨を撫でながら川野が言う。
客の切れ間で、ようやく一息ついた店内を見回して葉咲は手を拭きながら頷いた。
「あ、下の方にロゴが入ってるんだ!」
木洩れ日の隙間に、ひっそりと抜いてある店名の白文字を見つけて海山は楽しそうにはしゃぐ。
恋人の楽しそうな様子を眺めている川野の無表情さはいつも通りとりたてて変わっていないが、長い付き合いだから分かる眼差しの優しさが彼が海山を大変愛しんでいるのを教える。
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