辺境遠征(前編)
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いつの間にか日はもう暮れてしまい、辺りはすっかり暗くなっていた。 道の両脇に並ぶ木々の黒々とした影が、次第にまばらになっていく。山すその荒れた道が終わり、荷台の揺れが穏やかになった。 ゆったりとした夜風が吹き抜け、ワルトの鼻をなでた。 ワルトは何かに気づいたようにふと空を見上げると、小さな声でつぶやいた。 「風が匂う……こりゃ、今夜は雨だな」
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