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ガナン帝国の北東に鳥人族の村があった。
ゲルニックは長の家の三男として生まれた。
彼の母親は大賢者の血筋を引いていた。
その為、ゲルニックは魔力が高かった。
その尋常ならない魔力のせいか怖がって彼に近寄る者はいなかった。
彼はその孤独を受け入れた。
一人静かに本を読むのが日課だった。
が、その静寂を打ち破る者が現れた。
「ねぇ、一人でいて楽しい?」
「・・・誰ですか貴女」
ゲルニックの事を熱心に見つめるベホマスライムの少女がいた。
彼女の名はミルナ。
ゲルニックとは正反対の性格で、皆に好かれていた。
彼女はゲルニックに一目惚れして彼に近づこうと必死に声をかけつづけた。
最初はうっとおしがっていたゲルニックも次第に惹かれていった。
「私はいつか立派な魔法使いになってみせますよ」
「じゃあその時までに私は可憐な女性になってゲルニックのお嫁さんになる!!!」
「ミルナ・・・」
しかし、その幸せも長くは続かなかった。
呪文の修行から帰ってくると家族がバラバラになって血だまりに浮いていた。
奥に行けば行くほど血の臭いが濃くなった。
そして自分の部屋にいたのは・・・。
「・・・ーーーーーーー!!!!」
愛した少女が、ミルナが殺されていた。
必死に名を呼んだ。
身体を揺さぶった。
しかし少女はピクリとも動かない。
「お前は弱い。それゆえに大切なものを失う。強くなりたいか?ならば私を憎め!!憎んで憎み続けて、私を殺しに来い!!!」
ミルナや家族を殺したのは父親であり長である闇王であった。
家族とミルナの仇をとる・・・!
それだけを目的に生き、若くしてガナン帝国の将軍となった。
仲間は作らなかった。失えばまた絶望するから。
その荒んだ心が救われるのは一人の少女との出会いだった。
それはずっと後の事・・・。
ゲルニック編 完
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