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 ――――。  一ヶ月。この世界に来てからおよそ一ヶ月が過ぎた。  耀は、今日の疲れを癒すために宿をとっていた。この宿はログハウスをモチーフにされているようで、仄かに木の匂いがしてくる。  厚い木のドアを開け中に入ると、豪快な笑い声が耳に入ってきた。それとともに、酒のアルコールの匂いがツンと耀の鼻腔をくすぐる。  この宿は、宿泊とともに食堂も経営していて、一回は宿泊者と食堂の利用者の、コミュニティルームになっている。  今日はさしあたり、十人といったところだろうか。それほど多くは無いが、大分酒が入っているようで、その声は一際大きい。  輝が入り口で待っていると、すぐに宿屋の女将がパタパタとかけよってきた。 「すまないねぇ、こいつらがうるさくて。びっくりしただろう?」  女将がやれやれといった様子で客たちを見回す。  耀は苦笑いをすると、「いえ」と短く返した。 「そうかい? まぁ、こういう街柄なんだ。勘弁しておくれ。で、飯はどうするんだい?」 「んー、そうですね……」  輝は少し考え込んだ。とはいえ、結論が出るのは早かった。流石にこの雰囲気に突入していく勇気はない。  親戚同士の酒の席で、疎外感を感じる子供の気分だ。 「いえ、今日はもう疲れたので部屋に帰って休むことにしますよ」  俺はそういうと、足早にその場を去って、自分の部屋へと向かった。  階段を上がり自分の部屋に戻っても、階下の喧騒が鳴り止むことは無かった。  俺は軽く溜息をつく。この騒音にさえ目を瞑れば、この値段でこの設備は破格だ。シャワー完備で、ベッドもダブルといったところか。  部屋の装飾こそ簡素なものの、俺はそこが気に入っている。
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