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「いやでも……」  有り得ない。達弥にどれだけ話を聞かされようと、どれだけリアリティのある情報を出されようと、それが事実であることを認めることは難しかった。  科学が発展したこの世界で、そんな魔法のような存在は皆無だ。この広い地球、未開拓地があるのは当然だし、未知の技術があることも否定はしきれない。  だが、それでも、耀にはそれを信じられるほど、ロマンチストではなかった。  すると、達弥はやれやれと言った表情で一息つき、先ほどまでの真剣な表情を崩す。 「――僕だってさ、信じているわけじゃぁない。ありえない。でもさ、実際に送られてきたんだ。なぁ、僕たちはこれまで心踊るような体験をしたかい? 僕は非現実を求めているんだよ。何もかもが解明されたこの世界はつまらないよ」  達弥はゆっくりと教室の天井を見上げた。もう教室に残っているのはこの二人だけだ。窓の外からは夏の陽光がジリジリと入ってくる。 「耀。信じてくれなくてもいい。でも、試してみないか? これが本当に真実なのか。それとも都市伝説なのか――」 @@@@ 「ふぅ……」  耀は自宅のベッドに仰向けに倒れこんだ。何故かこうすると、一日の疲れがとれるような気がした。  耀は目を瞑って今日達弥から聞いたことを反芻する。冷静に考えてみれば、やはりおかしい話だった。  しかし、達弥の熱意に押されたとはいえ、自分も少し期待しているのは確かだ。  平凡な生活に特に不満を抱くことはなかった。  強いていえば、色が無い。達弥の言ったとおりだ。半分馬鹿にして聞いていたものの、話にそそられる部分はあった。  年頃の男だったら、誰でも一度は望むだろう。自分が勇者になったり、魔法を使ったり……。  そう、夢物語だ。分かっている。そんなことは耀にだって分かっていた。でも、してみたい。無理だとは分かっているけど、やってみたいとは思っていた。  だから、受けた。達弥の誘いを。  輝はゆっくりと立ち上がり、デスクの上に置いてあるパソコンの電源を入れる。  黒光りした機体が僅かな起動音をあげると、すぐに画面がついた。このパソコンは先月出たばかりの最新モデルだ。使い道のなかったお年玉を大分叩いて買ったものだった。 「うーむ、やっぱり最新のは性能が良いな」
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