始まり

6/31
前へ
/39ページ
次へ
「たらこパスタが食べたい。」 私は葵人の顔を見るでもなくそう呟いた。 「じゃあどこかによって、食べていこうか。」 葵人は私の顔を覗き込む。 「葵人のたらこパスタが食べたい。」 私がそういい直すと、葵人は少し驚いた顔をした。 「家に材料ないし、今から作ったら結構時間かかるよ?」 「葵人のたらこパスタが食べたい。」 私は葵人の顔を見てもう一度言った。葵人はそんなに料理のレパートリーがあるわけではないが、葵人のたらこパスタは優しい味がして本当に美味しいのだ。だから、たまに無性に食べたくなる。 そしてそんなたらこパスタを作る彼は 「じゃあスーパーによっていこうか。」 私には勿体ないぐらいに、たまらなく優しい人なのだ。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加