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「…っざっけんな糞爺…!!」
静寂を切り裂いて、誘鵺の怒号が響く。
ぎらり、と。
その瞳には、言い知れぬ憤怒が燃えていた。
「てめぇそれでも大長かよ!!
“牙”として出すってことはよ、そいつを“贄”として差し出すってことだろ!!
てめぇは安全圏から眺めてっから、んなこと平気で言えんだろ!?
今まで“牙”がどんだけ死んだか、知らねぇとは言わせねぇ!!
――雪音も、魄も、菜月も、悠も――皆、てめぇのせいで死んだんだ…!!」
――瞬間、空気が凍る。
触れれば切れそうなほどに張りつめた空気が、耳障りな音を立てて軋む。
老人の発する怒気と誘鵺の発する殺気とが混ざり合い、死の気配を濃密に漂わせた。
たわめられた竹がいつか弾けるように。
それは、綻びの定められた、一瞬の静寂。
――すうっ、と。
深く息を吸う音を聞きとめた者は、この場に誰一人としていなかった。
だから次の瞬間に放たれた言葉に誰もが呑まれ、会合は一方的に終了されることとなる。
「…私が、新しき“牙”となろう。
大爺様も誘鵺も、そして長方も、それで異論ないな?」
そう言うと箏音は、皆が呆気にとられている間に、襖を開けて立ち去った。
誰も何も言えぬまま、襖の向こうへ消えた箏音に、思いを馳せていた。
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