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「…約束だ。
俺達はまた、きっと出逢う」
血塗れで、男は囁いた。
自らの腕の中で、今まさに散ろうとしている美しき花に。
「…ええ…。
…約束。
だから…。
だから、泣かないで?」
女は語る。
腕の中。
散る花びらは優しく、男の頬を撫でた。
涙を拭うように。
「…最後にもう一度、歌ってくれないか?」
声が震えるのを必死で抑えて、男は言った。
女はそれを聞き、弱々しく、しかしぞっとするほど美しく、微笑んだ。
「…ええ」
女の唇が動き、その細い喉からそれは流れた。
――全ての悲運さえ幸福に塗り替える、それは世の理を覆す程の、美しき愛の唄だった。
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