第一章・目醒め

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まだ薄暗く、朝日も漸く起き出す頃。 雄鶏のけたたましい声が、夜の静寂を切り裂いた。 「…時間通りだな。 全く、お前は本当に優秀だよ」 立ち枯れた桜の樹に腰掛けた黒い影が、笑いながら雄鶏に言った。 それに対して雄鶏は、コケ、コケー、と、惚けた声を出しながら首を傾げるだけだ。 それは当たり前と言えば当たり前のことだったが、黒い影にとっては意外なことであった。 眉を上げ、苦笑混じりに呟く。 「おい、話ぐらいしたらどうだ? 今は誰も居ないのだから」 「………。 …そうですね。 “若”がそう仰るのなら…」 雄鶏の口が微かに動き、ヒトの言葉を紡ぐ。 ぷるぷると小さな躯を揺らし、白い羽根を辺りに散らし――。 雄鶏は、ヒトの姿へと変化した。
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