第一章・目醒め

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山の端を朝日がなぞり、煌めく太陽が顔を覗かせた。 ――雄鶏は、その一啼きで朝を呼ぶのだ。 「今日も、良い仕事をしたでしょう?」 得意気な声が、朝の澄んだ空気に響いた。 日の光を受けて、輝く白髪。 ところどころ鮮血の如き朱が、あるいは朝焼けの如き真紅が、その白髪に混じって揺れている。 まだ齢十ニほどに見えるその幼顔は、誇らしげに笑っていた。 「ああ、本当にな。 もう幾度朝を招いたか、自分でも覚えていないだろう? それでいて、一度たりとも時を狂わせたことはないのだから、お前は本当に優秀だよ」 朝日に照らされ、影はその色を一層濃くする。 労いの言葉とは裏腹に、黒い影は酷く薄暗い笑みを浮かべていた。 逃れられない運命を呪うように。 授けられた力を拒むように。 それは哀しい、自嘲を込めた笑みだった。 「…そんなことはございませんよ。 “若”こそ、そんなにお若いのに…。 ――“濡れ鴉”と“銀狼”の……」 「…それ以上言うな、呼朝<コチョウ>。 それに、その呼び方はやめろ。 私は、皆に認められたわけではないのだから」
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