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山の端を朝日がなぞり、煌めく太陽が顔を覗かせた。
――雄鶏は、その一啼きで朝を呼ぶのだ。
「今日も、良い仕事をしたでしょう?」
得意気な声が、朝の澄んだ空気に響いた。
日の光を受けて、輝く白髪。
ところどころ鮮血の如き朱が、あるいは朝焼けの如き真紅が、その白髪に混じって揺れている。
まだ齢十ニほどに見えるその幼顔は、誇らしげに笑っていた。
「ああ、本当にな。
もう幾度朝を招いたか、自分でも覚えていないだろう?
それでいて、一度たりとも時を狂わせたことはないのだから、お前は本当に優秀だよ」
朝日に照らされ、影はその色を一層濃くする。
労いの言葉とは裏腹に、黒い影は酷く薄暗い笑みを浮かべていた。
逃れられない運命を呪うように。
授けられた力を拒むように。
それは哀しい、自嘲を込めた笑みだった。
「…そんなことはございませんよ。
“若”こそ、そんなにお若いのに…。
――“濡れ鴉”と“銀狼”の……」
「…それ以上言うな、呼朝<コチョウ>。
それに、その呼び方はやめろ。
私は、皆に認められたわけではないのだから」
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