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「そういえば夜呼<ヤコ>……」
「箏音ぇ~っ!!
集会の時間だぞ~っ!!」
大きな鴉が旋回し、凄まじい速度で箏音の元に舞い降りた。
地に降り立つとともにヒトの姿へと変化したそれは、満面の笑みで駆け寄ってくる。
「…誘鵺<ユウヤ>…。
貴様は何度言えばわかるんだ?
鴉の姿でヒトの言葉を話すな。
そして不用意に変化するな。
…もし姫様のお目に触れればどうなるか。
貴様も知らぬわけではあるまいに」
ぎらり、と。
漆黒の瞳に、切れすぎる刃のような、冷徹でおぞましい光が宿る。
それは吐き気がするほどに濃密な殺気で、けれど心を壊すほどに狂おしい愛情だった。
それを知ってか知らずか、誘鵺はへらへらと曖昧に笑った。
「…まぁまぁ、そうかっかすんなって。
わぁってるよ。
姫さんに知られちゃマズいことぐらい。
でもさ、お前の前でくらいありのままの俺でいさせろよ」
真剣な眼差しで、誘鵺は言った。
それを聞いた箏音は悔しげに歯噛みして、けれど言い返す言葉も見つからずに、最後には目を伏せて押し黙った。
「っなははっ!
そう暗い顔すんなって。
冗談冗談。
…ん~、でもさ?」
一瞬の間を置いて、誘鵺は続ける。
「…俺の隣にいられるのはさ、お前しかいねぇよ。
てか、お前しか要らねぇよ。
なぁ、箏音。
お前は俺が守るから」
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