第一章・目醒め

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「そういえば夜呼<ヤコ>……」 「箏音ぇ~っ!! 集会の時間だぞ~っ!!」 大きな鴉が旋回し、凄まじい速度で箏音の元に舞い降りた。 地に降り立つとともにヒトの姿へと変化したそれは、満面の笑みで駆け寄ってくる。 「…誘鵺<ユウヤ>…。 貴様は何度言えばわかるんだ? 鴉の姿でヒトの言葉を話すな。 そして不用意に変化するな。 …もし姫様のお目に触れればどうなるか。 貴様も知らぬわけではあるまいに」 ぎらり、と。 漆黒の瞳に、切れすぎる刃のような、冷徹でおぞましい光が宿る。 それは吐き気がするほどに濃密な殺気で、けれど心を壊すほどに狂おしい愛情だった。 それを知ってか知らずか、誘鵺はへらへらと曖昧に笑った。 「…まぁまぁ、そうかっかすんなって。 わぁってるよ。 姫さんに知られちゃマズいことぐらい。 でもさ、お前の前でくらいありのままの俺でいさせろよ」 真剣な眼差しで、誘鵺は言った。 それを聞いた箏音は悔しげに歯噛みして、けれど言い返す言葉も見つからずに、最後には目を伏せて押し黙った。 「っなははっ! そう暗い顔すんなって。 冗談冗談。 …ん~、でもさ?」 一瞬の間を置いて、誘鵺は続ける。 「…俺の隣にいられるのはさ、お前しかいねぇよ。 てか、お前しか要らねぇよ。 なぁ、箏音。 お前は俺が守るから」
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