第一章・目醒め

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――ごぉん、と。 重厚な音が響いた。 それは、会の始まりを告げる鐘。 ぎりぎりのところで会合場に滑り込んだ箏音達は、溜息を吐いて安堵に身を緩ませた。 一生に一度あるかないかの大切な会に遅刻などしてしまった日には、どんな罰が待っているか――考えただけでも恐ろしい。 …まぁ、そんなことを仕出かしてしまうようなら自害した方がマシだと、箏音は割と本気で思った。 周りを見ると、20畳ほどの部屋には様々な族の長が集まり、その誰もが、決してきらびやかとは言えないが、質の良い衣を身に纏っている。 長を務めるだけあって、皆老齢だが剛健。 一様に厳しい顔をして、大長を今か今かと待っていた。 「あっぶね。 まだ爺は来てねぇみたいだし、ついてるな」 誘鵺がそう囁いたが、なんだか意地悪な気持ちが込み上げてきて、わざと素っ気なく、箏音は言った。 「…そうだな」 誘鵺はそんな箏音の態度が気に入らなかったのか、その後幾度となくちょっかいを出したが幾度となく無視されたため、最後には少し涙目になって俯いてしまった。 少々可哀想に見えなくもなかったが、先程私を動揺させた分もっと落ち込めばいいのだと、箏音は弟を虐めたくなる姉のような気持ちで見つめていた。
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