赤子

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―各大陸から離れた島国"日本"。 その小さな島国のほぼ中央にある豪邸。 門だけを見ても裕福だと分かるほどに豪奢な造りの中には日本庭園ならではの風景が広がっている。 そんな家のある一角。 部屋の中からは終始人が歩き回る音が聞こえる。 「親父、ちったぁ落ち着けよ。」 「そうよ、もう3回目でしょ? 少しも慣れないの?」 どうやら落ち着きなく歩き回っていたのはこの兄妹の父親のようだ。 「いや…落ち着こうにもな…こう、じっとしていては…。」 最早最後まで喋れてすらいない。 「いつもの面影はどこいったんだ…。」 先ほどから父親を非難する2人にも落ち着きはない。 兄の方は短髪で眼鏡を掛けているのだが、今はその眼鏡を拭いたり、弦を折ったり開いたりしている。 妹は背中の中程まである黒く長い髪の先をずっと指先で弄っている。 そうしていると戸の向こうから大急ぎで走って来るような音が響く。 「だ、旦那様!!…お子様がっ…お産まれになりましたっ!!」 若い、まだ10代前半くらいの女中が息を切らして部屋に入ると、 「「「すぐ行く!!」」」 その台詞が言い終わるか終わらないかの内に、3人は部屋からかなりの勢いで飛び出していった。
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