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「別に平気さ。俺はあまり食い意地がなくてな。」
格子の向こうに立つ女の口元が、かすかに綻ぶ。
「意地を張ってる」
「意地ではない、事実だ。牢獄で笑われるとは思わなかったな。」
男が言う。
「俺は生まれてまだ間もない。神として生まれて気づけば即逮捕とは夢にも思わなかったな。」
男が鉄格子の護符に触れる。
「触れるだけなら何も起こらないが、神通力を使うと拘束具になる護符はなかなかだ。」
男は、自分の手足を拘束する鎖を見せびらかす。
鎖には壁と同じルーン文字が刻まれていた。
男の漆黒の目が窓を見上げた。
青い空に、自由を願った。
視線を戻すと、女は男を眺め続けていた。
「一つ聞き忘れたが…毎日俺に食事を届けてくれるお前の名前は?」
「なぜ聞きたいの?」
「聞きたいだけだ。特に理由はない。」
女は、怪訝そうな顔をした。
「あなたを捕らえ閉じ込めた神々の一人は、私なのよ?」
「それはそれだ。俺はお前の名前を知りたいこととは関係ない。」
「・・・・・フフッ。」
女は小さく微笑んだ。
「本当は話してはいけないのだけど、まぁ気にすることはないわね。」
女が近寄る。
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