ノーモア・ロンリーナイツ

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 二階の部屋を通り抜け、ベランダに男は顔を出す。二階の空気は外気とそれほど変わらないようで、男はやはりコートを、部屋を通り抜けるときも探していたが、そこにもない。  ベランダに椅子はないものの、広さはあった。街の様子がそこからなら、立っても座っても見ることができた。男はベランダのちょうどいい幅である柵にカップを置き、部屋からベランダへ椅子を持ち出して、外のほうへ向けたその椅子に猫背ぎみに座る。  冷めたコーヒーを口に含むと同時に、花火があがる。街の上の空間よりもずっと向こうにそれはあった。街の建物の壁に花火の色が、花火が上がっている間だけうつる。男は立て続けにコーヒーをすする。
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