ノーモア・ロンリーナイツ

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 男の脳裏に、コートのことがよぎる。男は、ある女の家にそれを忘れてきた。その女は絵を描いていた。男は絵の話に興味を持って、家に行ったのだが、女の話が長く、帰るときにコートを着るのを忘れてしまっていたのだった。  男は視界に消え、現れていた花火に意識を戻した。だが、花火を見て、男の思うことは、彼女もこの花火をおそらく男よりもずっと花火の近くで見ているだろう、ということだった。  男は気を抜くように顔をあげた。だが、その視点からは、いろいろな星や、月や、顔色の悪い雲なんかしか見えなかった。
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