あなたはささやきかける

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 瓦礫に瓦礫が重なると着ぶくれしたような街の外観になる。こんもりした山があるのとおなじように、なにかがぶつかった痕跡を残したコンクリートがある。  瓦礫の、その場所には風が吹いているのだろう。その風は瓦礫をなでるように、ではなく、瓦礫を冷やかすみたいに降りてくる。瓦礫に感覚はないから怒りはしない。でも、腹立たしい光景に見えることだろう。紙といえないような紙くずが揺れるだけで、なおさらだ。
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